今回は、土木工事に欠かせない重要なステップである「測量」についてご紹介します。
なぜなら、ゼネコンの現場での測量は、工事の基礎を築くとても重要な仕事だからです。
さらに、新入社員や若手社員が行う頻度の高い作業でもあります。測量の種類や最新の技術について紹介していきます。
測量の役割とは?
測量とは、土地や建物の位置や大きさを正確に計測する作業のことです。
測量によって、地形や地物の状況を把握し、設計図の作成や工事の進行に必要なデータを作成します。正確な測量があってこそ、道路や橋、ダムなどの土木構造物の出来形や品質が確保できるというわけです。
位置は通常X、Y、Zの座標を使用します。X、Yが平面座標でZが標高です。Zは図面では、ELと記載されることが多く、「エレベーション」と呼びます。
現場付近の基準点の座標を元に、必要な座標を計算していくという方法が一般的です。
測量で使用する機械について
測量には、さまざまな専用の機械が使用されます。
一般的に使用されるのはレベル、トータルステーションなどです。これらの機器は、それぞれの工事の段階や目的に応じて使い分けられています。
以下に測量機器の概要を説明します。
レベル
レベルは、土地の標高(Z座標)を正確に測定するために使用されます。
この機械は、望遠鏡のような構造を持ち、水平方向に回転させながら視準を行うことで、高さの差を測定します。簡単に言うと、水平な高さを見る事ができる望遠鏡です。使い方としては、基準点の標高を基に任意の点の標高を算出します。
レベルは基準測量や施工測量において欠かせない道具であり、最も使用頻度が高い機械の一つです。
レベルを使用する際には、スタッフと呼ばれる標尺を用いて高さを測定します。測量は二人一組で行い、測量者はスタッフを持った助手と協力しながら、複数の地点の高さを比較することで、現場全体の標高を把握します。
精度としてはミリ単位です。測量する二人の技術と機械の精度によりますが、上手い人だと50m程度であればミリ単位で測量できます。ただし、スタッフの目盛りの読みはアナログなので、2.5mmを2mmと読むか、3mmと読むかで変わったりします。
デジタル レベル
近年ではデジタルレベルと呼ばれる機械もあります。
基本的にできることは通常のレベルと同じですが、読み取り作業を自動化することで人為的な誤差を減少させ、さらなる精度向上と効率化が図られています。私が知っている限りでは、0.1mm単位で測定できます。
まだまだ現場監督が使用することは少なく、測量屋さんが使用するイメージです。
トータルステーション
トータルステーションは、レーザー光を利用して距離を正確に測定し、同時に角度も測定できる機械です。
X、Y、Zのすべての座標を計算できますが、X、Yの座標を測定することが多いです。(Zは上記のレベルを使用することが多いです。)
トータルステーションの精度は、一般的にミリ単位であり、特に正確な位置情報が求められる現場で多用されます。光波測距儀とも言われ、現場では「光波」と呼ばれることが多いです。
反射プリズムに光を当て、距離を計測するので通常二人一組で行います。トータルステーションは長距離の測量が可能であり、40m程度であれば十分な精度で測量できます。
レベル以上に測量者の技術によるので、上手い人だともっと離れていても精度は高いですし、下手だと近くても精度は落ちます。

さらに、自動追尾型のトータルステーションを使用すると、一人でも測量が可能になるため、作業効率が大幅に向上します。
自動追尾機能を活用することで、反射プリズムの位置をリアルタイムで追跡することができるため、測量者はトータルステーションを設置したら、ミラーとスマホを持って測量したい点に移動できます。スマホでトータルステーションを操作し、測距するとデータをスマホに表示させることができるということです。
自動追尾機能のあるトータルステーションは逆に知りたい座標を入力すると、その場所に案内してくれる機能もあったり、面倒な計算が必要な丁張りをかける作業を簡単に指示してくれたりと多機能です。
ただし、一人での測量は間違いに気づきにくいので、確認作業を確実に行いましょう。
測量の種類
測量にはいくつかの種類があり、目的に応じて使い分けられます。
ほとんどの現場では特に分類せずにすべて「測量」と呼んでいると思いますが、主に行われている測量は以下のように分類できます。
以下に代表的な測量の種類をご紹介します。
基準測量
基準測量は、土地の基準となる基準点を設置し、その位置を正確に測定することを目的とします。
簡単に言うと、基準点を増やす測量です。
既知の基準点を元に、施工上使いやすい位置に基準点を増やしていくという作業なので、精度が非常に重要です。もし誤差があると、その基準点を使用した測量の精度がすべて誤差を含むものとなってしまいます。なので、測量の正確さが工事の品質や出来形に直結する重要な測量です。
工事を開始する際には、最初にいくつか基準点の座標が与えられており、その基準点を元に必要な場所に新たな基準点を追加していきます。
また、基準点は動く可能性もあるので、定期的に確認することも重要であり、必要に応じて座標の修正を行います。
この基準点が他の測量の基準となり、工事全体の基礎を支える非常に重要な要素となるので、経験豊富な技術者が細心の注意を払って作業に当たる必要があります。
地形測量
地形測量は、地形や地物の形状を詳細に記録するための測量です。
簡単に言うと、現地の形状を図面を書くための測量です。
道路や河川、建物の設計や施工数量の算出、施工計画のための情報を得るために行われます。工事の開始前には図面との整合性を確認し、現場が設計通りかチェックする必要があります。
また、工事の途中で追加発注があった場合や計画変更が生じた場合にも、地形測量を行うことで、現状の把握と新たな計画の精度を確保することができます。
さらに、土工事等では、施工の前後の現況を測量しておき、そのデータを基に施工数量を正確に割り出したりします。施工数量の精度は、工事費の正確な見積もりや原価管理にも直結するため、このプロセスも重要です。
施工測量
施工測量は、実際の工事を進める際に必要な測量です。
簡単に言うと、現場に設計図を描くための測量です。
建設物の位置や高さを正確に現地に示すことで、設計通りに工事が進むようサポートします。
この測量結果を使用して、測量したとおりの施工を行うため、もし、間違いがあると、間違いが間違いのまま施工されることになります。工事全体に影響を与えることになるため、測量の正確さと信頼性が確保される必要があります。
特に、この測量結果を使用するのは測量者ではなく、実際に現場で施工を行う施工者です。つまり、勘違いを防ぐためにわかりやすい表示が不可欠です。
測量結果の表示が誤解を生むようなものであれば、施工におけるミスが発生し、やり直しによる工期の遅れや経済的な損出を招く可能性があります。そのため、測量結果の表示方法や説明には、施工者が誤解しないような工夫が求められます。
具体的には、測量点に対する明確な標識や丁張りに示される指示内容が簡潔でありながら正確であることが重要です。図面を作成して、紙で渡しておくことも有効です。
次に丁張りとは何かを簡単に説明します。
施工現場では丁張りと呼ばれる基準を示す目印を設置し、土工事や側溝・桝などの二次製品を設置する目安として使用します。
簡単に言うと、空中に図面を描くという作業です。
丁張りは、建物の基礎や構造物の高さを示すための重要な役割を果たし、現場作業員が正確に施工を行うためのガイドラインとなります。丁張りがしっかりと設置され、必要な情報が明示されていれば、作業員は設計図に基づいた適切な高さや位置を保ちながら作業を進めることができます。
さらに、丁張りには定期的なチェックが必要です。工事中の状況変化や重機等の振動などで丁張りがズレてしまうことがあるため、その都度確認しなければなりません。
こうした維持管理の作業も、施工測量においては非常に重要であり、工事の品質と出来形を確保するためには欠かせないプロセスとなります。施工測量と丁張りの管理を徹底することで、現場での誤差を最小限に抑え、計画通りの施工を実現することが可能になります。
出来形測量
出来形測量は、工事が完了した段階で行う測量です。
簡単に言うと、完成した構造物が設計通りに作られているかを確認するための測量です。
つまり、出来形管理に使用され、対象の項目については発注者の検査で確認されます。検査で使用されるこのデータは、工事の信頼性を保証する上で欠かせないものとなります。
出来形測量は、工事の終盤での確認作業だけでなく、全体のプロジェクトの成果を証明するための重要なプロセスでもあります。この測量を通じて、施工が計画通りに進み、期待される品質が達成されていることを明確に示すことができます。
そのため、出来形測量は現場の施工管理における重要な位置を占めており、確実な記録と正確な報告が不可欠です。
最新の測量技術
近年、測量技術は大きく進化しています。普段使うレベルやトータルステーションとは違い、これらの最新技術には専用の機械が必要であり、測量業者や技術部門による高度な技術が求められます。以下に最新の測量技術をご紹介します。
UAV(ドローン)測量
UAVを使用した測量は、広範囲の地形を3Dで効率的に測定することができます。
簡単に言うと、空から見える範囲をすべて3Dモデルにする測量です。
高所やアクセスが難しい場所でもUAVを活用することで安全かつ迅速にデータを取得できるため、多くのゼネコンで採用されています。特に、大規模な土工事等で使用されやすく、広範囲の現況把握が短時間で行える点が評価されています。
適用できる測量は、一般的に地形測量と出来形測量です。

具体的な測量方法としては、まずUAVを使用して現場を空撮し、高精度の写真を撮影します。この際、UAVにはGPS機能が搭載されており、各写真の位置情報が正確に記録されます。
次に、撮影された複数の写真を専用のソフトウェアで処理し、写真同士を合成することで現場の3Dモデルを生成します。
この3Dモデルを基に、地形の形状や高さを正確に把握することが可能です。
この3Dデータは、設計段階での地形分析や施工計画の立案にも利用され、プロジェクト全体の効率化に大いに貢献します。
例えば、地形の高低差を視覚的に確認することで、掘削や盛土の必要な箇所を正確に把握でき、施工計画の精度が向上します。また、3Dモデルを作成できるため、数量計算も容易です。
また、この方法は短時間で広範囲を測量できるため、特に大規模な工事現場で非常に有効です。従来の地上測量では日数がかかる広大なエリアでも、UAVを使うことで迅速にデータ収集が可能です。
デメリットとしては、UAVを飛行させて良い場所が限られることや飛行させる場所によって、資格の取得や許可が必要なことです。
また、現地が森林であったりすると、地面が撮影できないため、正確なデータが得られなくなります。
さらに、強風等の悪天候ではUAVの飛行ができなくなるため、ほかの測量より天候に左右される点が挙げられます。
他にはUAV測量に限らず、3Dデータを活用した測量は、データを取り扱う際に専用のソフトが必要になる点や、データ容量が大きいので、PCのスペックによっては実用的な動作ができないことがあるので、注意が必要です。
3Dレーザースキャニング
3Dレーザースキャナーを使うことで、地形や構造物を三次元的に捉え、詳細な点群データを取得する測量です。
簡単に言うと、トータルステーションが勝手に見える範囲すべての座標を測量してくれる感じです。
具体的な測量方法としては、トータルステーションと同じように機械を設置し、基準点を測量したら、あとは機械が勝手に見える範囲を測量してくれます。
このデータは、点群データ(無数の点の集まり)で構成されており、地形や構造物の細部まで正確に再現することができます。
この方法では、レーザーが届く範囲は数十メートル程度ですが、障害物の影になる場合は機械を据え替えなければいけません。また、距離が遠くなるほど測定精度が落ちます。
そのため、測量の計画段階では、地形の状況や測量に求められる精度を考慮し、最適な位置を検討することが重要です。
適用できる測量は、一般的に地形測量と出来形測量です。
3Dレーザースキャニングの利点として、地形や構造物を短時間で高精度に測定できることが挙げられます。また、取得した点群データは設計図や施工図と重ね合わせて比較することができるため、施工が設計通りに進んでいるかどうかを視覚的に確認することが可能です。
さらに、レーザースキャナーは地上だけでなく、手の届かない場所の測量もできます。
例えば、トンネル上部や壁面、橋梁下面などの複雑な構造物にも対応できるため、さまざまな土木工事において活用されています。
GNSS測量
GNSS(全球測位衛星システム)を利用した測量は、地球上の位置を高精度で特定することができます。
つまり、既知の基準点がどんなに離れていても、測量機器があればX、Y、Zの座標を測量できるということです。
これは山間部等の周りに基準点がない場所やアクセスが難しい場所での基準測量に適しており、特定の条件で測量を迅速に進める事ができます。
ただし、GNSSを使用する際には上空が開けている場所でないと衛星信号を受信できないため、測量には環境条件が重要です。森林や建物が密集した場所では受信が困難となるため、現場の選定にも注意が必要です。
適用できる測量は、一般的に基準測量です。
GNSS測量の精度は、一般的に数センチメートル程度ですが、年々精度が向上しています。
まとめ
測量は、土木工事の成功に欠かせない基礎となる作業です。
正確な測量データがあってこそ、道路や橋、ビルなどの土木構造物が計画通りに建設され、安全で高品質なインフラが提供されます。
基準測量から施工測量、最新のUAVや3Dレーザースキャナー、GNSS測量など、さまざまな技術が現場で活用されています。これらの技術が組み合わさることで、精度の高い工事が実現し、工期の短縮やコスト削減にもつながります。
測量技術の発展は、工事現場の作業をより迅速かつ正確に行うため、大きな役割を果たしています。