2025年問題の概要
建設業界の視点からの2025年問題とは、
「団塊の世代を中心とした高齢層が大量に退職することで、現場での技術や知識の継承が困難になる」
と言う問題です。
つまり、日本の社会構造が原因となり、日本全体に将来にわたり影響がある大きな問題で、簡単に解決できるものではありません。
日本の年齢構成は、少子高齢化が急速に進んでおり、現在65歳以上の高齢者は全人口の約30%を占めていて、これが年を追うごとにさらに増加すると見込まれています。
特に労働力人口(15歳から64歳までの人口)が減少しているため、労働力不足が深刻化することが懸念されています。
さらに、建設業界では、労働力不足と事業者の代替が進んでいないという問題が将来的に大きな課題となっています。
つまり、労働力と技術力の両方が落ち込み続けるということです。
この影響により、建設業界全体で技術の断絶が起こり、質の高いインフラ整備やメンテナンスが難しくなる可能性があります。
また、技術者不足が進行することで、建設プロジェクトの遅延やコスト増加といった問題も深刻化することが予想されます。
問題の解決策
2025年問題に対処するためには、いくつかの解決策が考えられます。
1. テクノロジーの導入と自動化
建設業界における労働力不足を補うためには、テクノロジーの導入と自動化が重要な役割を果たします。
具体的には、ドローンやロボット、3Dプリンターの活用により、人手に頼らない作業を増やすことが可能です。
また、BIM(Building Information Modeling)などのデジタル技術を活用することで、設計や施工のプロセスを効率化し、労働力の不足をカバーすることができます。
他にも様々な新技術が生まれていますが、つまり、
「新技術を使いこなして、人手に頼らないようにしましょう。」
ということです。
2. 若年層の育成と魅力的な職場環境の整備
若年層の建設業界への参入を促進することも重要です。
そのためには、建設業界のイメージを向上させるとともに、働きやすい職場環境を整備する必要があります。
具体的には、労働条件の改善や、働き方改革による柔軟な勤務体系の導入、給与や福利厚生の向上が挙げられます。
また、職業訓練校や専門学校と連携して、若年層に対して建設業に必要なスキルを教える教育プログラムを充実させることも効果的です。
いわゆる、
「ライフワークバランスの最適化と教育の実施で若手の労働力を復活させましょう」
という感じでしょう。
3. 高齢者の労働力の提供と経験の継承
団塊の世代の大量退職に対応するために、高齢者の再雇用や部分的な労働の活用を推進することも考えられます。
高齢の技術者が持つ豊富な知識や経験を若い世代に継承するために、メンター制度や技術講習の開催などを行うことで、現場での技術断絶を防ぐことが可能です。
実際、建設業界にはまだまだ若いし、体力もある高齢者は結構います。
私も将来こうありたいと思える尊敬できる先輩方です。
しかし、ここで言いたいのは、
「体力で貢献ではなくて、技術力を若手に教えて下さい」
ということです。
高齢者の方にも柔軟な働き方を提供することで、高度な知識や経験を継承しやすくなるでしょう。
4. 外国人労働者の受け入れ拡大
労働力不足を補うためには、外国人労働者の受け入れを拡大することも一つの解決策です。
特に技能実習制度の改善や在留資格の拡大により、建設業界に必要な人材を確保することが期待されています。
外国人労働者の受け入れには文化や言語の壁が存在しますが、適切な研修やサポート体制を整えることで、スムーズな労働環境を提供することが可能です。
最近は円安傾向ですが、まだ相対的に円の価値が高い国もたくさんあります。
そういった国から外国である日本にわざわざ来る方は、とても優秀で、やる気のある方も多いです。
そういう方々が日本や企業に馴染めないということもあるでしょうが、
私個人の感想を言うと、日本企業の受け入れ体制に問題があることが多い印象です。
言葉がうまく通じない状況でも、コミュニケーションをうまくとれる企業は、
外国人労働者の恩恵を十分に受け、win-winの関係を築けていると思います。
つまり、
「日本企業と外国人労働者、お互いに必要な労働力とお金を補い合いましょう」
ということです。
解決策を実行する上での課題
解決策を実行するにあたって、いくつかの課題が存在します。
1. 初期コストの高さと投資への抵抗
テクノロジーの導入や自動化を進めるためには、初期投資が必要です。
ドローンやロボット、BIMなどの新技術は高価であり、中小企業にとっては導入コストが大きな負担となり、個々の企業のみでの実現は難しいでしょう。
さらに、新しい技術に対する理解不足やリスクへの不安から、投資に対して抵抗を感じる企業も多く存在します。
2. 若年層の確保と育成の難しさ
少子化により、若年層が少ないことも大きな課題となっています。
また、日本の新卒採用は売り手市場となっており、若年層にとって選択肢が豊富であるため、建設業界が人材を確保することがますます困難になっています。
逆に言うと、建設業界は若年層にとっての魅力を提供できていないということです。
若年層の育成と建設業界への参入促進には、建設業界のイメージ向上やより良い魅力の提供が不可欠です。
しかし、建設業は依然として「危険で過酷」というイメージが強く、若年層の関心を引くことが難しい状況です。
昔の建設業界と比較すると、「危険で過酷」ではなくなっているのは事実ですが、
他業種と比較すると、「危険で過酷」は間違いではないです。
そのデメリットを補って余りあるメリットを提示できなければイメージ向上は難しいと思います。
また、職業訓練の充実には教育機関との連携が必要であり、教育プログラムの整備や指導者の育成など、多くのリソースが求められます。
教育や育成といったことも重要ですが、大学で習ったことが直接、就職先で活かせるかというと疑問があります。これは建設業に限った話ではないと思いますが、、、
3. 高齢者の再雇用における体力的・技術的な課題
高齢者を再雇用する際には、体力的な制約や新しい技術に対する習熟の難しさが課題となります。
現場での重労働が多い建設業では、高齢者にとって体力的に厳しい作業が多く存在します。
補助という形で再雇用できたらいいですが、現実はフルで働いてほしい企業ばかりです。
怪我や熱中症などのリスクも増えますし、企業の希望と個人の希望のバランスが難しいところだと思います。
4. 外国人労働者との文化・言語の壁
外国人労働者を受け入れる際、文化や言語の壁が大きな課題となります。
特に、安全面での指示やコミュニケーションが円滑でない場合、現場での事故のリスクが高まる可能性があります。
また、外国人労働者の定着率を向上させるためには、受け入れ体制の強化や文化的なサポートが必要です。
その課題の解決策
1. 初期コストの高さと投資への抵抗に対する解決策
初期コストの負担を軽減するために、政府や自治体による補助金や税制優遇措置を活用することが考えられます。
探してみると意外とあるものなので、中小企業の方々は調べてみるのも良いかと思います。
なかなか個人レベルで使えるものは少ないかも知れませんが、最近リスキリングに対する補助金もあったりするので、個人でも調べてみる価値はあります。
さらに、技術導入のメリットを示す具体的な成功事例を共有し、企業の投資に対する理解を促進することも重要です。
2. 若年層の確保と育成に対する解決策
若年層の関心を引くために、建設業界のイメージアップを図るプロモーション活動を行うことが有効です。
SNSや動画コンテンツを通じて、建設業の魅力や社会貢献の重要性を広く発信することで、若年層の関心を集めることができます。
建設業関係のYoutubeもあったりするので、私は時々見ています。
繰り返し見ていれば単純接触効果が働くのでイメージは良くなるはずです。
また、職場環境の改善やキャリアパスの明確化により、建設業界が魅力的な職業選択肢であることを示すことが重要です。
さらに、職業訓練校との連携強化や奨学金制度の導入により、若年層が建設業に必要なスキルを身につけやすくする支援も必要です。
技術面と経済面の両方から支援をすることも重要ですが、働くことも楽しいと伝えるのが最も近道だと思います。
3. 高齢者の再雇用における体力的・技術的な課題に対する解決策
高齢者の体力的な負担を軽減するために、負荷の少ない作業に従事してもらうことや、部分的な勤務を導入することが考えられます。
また、高齢者向けの技術トレーニングプログラムを提供し、新しい技術に適応するための支援を行うことで、高齢者が現場で貢献し続けられる環境を整備します。
メンター制度を導入し、高齢者が若年層に技術を教える役割を担うことで、技術継承と高齢者の活用を両立させることも可能です。
4. 外国人労働者との文化・言語の壁に対する解決策
外国人労働者との円滑なコミュニケーションを図るために、現場で使用する言語の簡素化や、ピクトグラムを用いた視覚的な指示を導入することが考えられます。
また、外国人労働者向けの日本語教育や文化適応プログラムを提供することや、
外国人労働者を受け入れる企業に対して、サポート体制の強化や研修を義務付けることで、安全で働きやすい環境を整備します。
いずれにしても、法律や制度をしっかり見直すことが必要ではないでしょうか?
個人的には、日本人と外国人という仕切りがあるとお互いに意識して、最終的には大きな壁に成長するということが多いと思います。
現場ではサポートとか研修とかの硬いことではなく、互いに思いやりを持って接することができれば、解決できると思っています。
5. 現場での効率化に向けた抵抗感に対する解決策
現場での効率化に対する抵抗を減らすためには、従業員に新たな手法やプロセスのメリットを理解してもらうことが重要です。
そのために、効率化による具体的な成果や成功事例を共有し、従業員の理解を深めることが必要です。
そこで、現場のリーダーを巻き込み、トップダウンでの意識改革を促進することも効果的です。
新しい技術や道具は必ずしも万能ではありません。
大体の場合、今までと比較すると良い部分も多いが、劣っている部分もあるという状態です。
新しい技術を否定するのは、なれない作業をする中で、簡単に劣っている部分に目がいってしまうからです。
人間、誰もが合理的な判断を行えるわけではなく、感情に左右される面も大いにあります。
多少無理をして使用し、慣れたところでやっと利点に目が向きます。
つまり、ある程度しっかり使用した後でないと、大多数の称賛は得られないと思います。
試験的に新技術を導入することや教育や研修プログラムを通じて、従業員が新たな手法に慣れ、積極的に取り組むための環境を整えることが求められます。
解決した場合にどのような良い状況になるのか
これらの課題が解決された場合、建設業界には以下のような良い状況がもたらされます。
1. 労働力不足の解消と安定した人材供給
テクノロジーの導入や若年層・外国人労働者の受け入れにより、労働力不足が解消され、建設業界における人材供給が安定します。
これにより、各プロジェクトがスケジュール通りに進行し、コストの削減や効率的な運営が可能になります。
2. 技術の継承と高品質なインフラ整備
高齢者の経験を若い世代に継承することで、技術の断絶を防ぎ、インフラ整備の質を高く保つことができます。
これにより、社会の安全性や安心感が向上し、公共のインフラに対する信頼が高まります。
3. 建設業界の魅力向上と若年層の参入促進
労働環境の改善やキャリアパスの明確化により、建設業界が魅力的な職業選択肢となり、若年層の参入が促進されます。
これにより、業界全体の若返りが進み、活力ある組織づくりが可能になります。
4. 生産性の向上と効率的なプロジェクト運営
新技術の導入によって、生産性が向上し、無駄のない効率的なプロジェクト運営が実現します。
これにより、コストの削減や納期の短縮が可能となり、顧客満足度の向上にもつながります。
5. 安全で働きやすい現場環境の実現
テクノロジーの導入や外国人労働者へのサポート体制強化により、安全で働きやすい現場環境が整備されます。
これにより、労働者の満足度が向上し、離職率の低下が期待できます。
6. 持続可能な業界成長と社会貢献の強化
労働力の確保と技術の向上により、建設業界は持続的な成長を遂げることができます。
また、社会インフラの整備を通じて、地域社会への貢献が強化され、日本全体の経済成長と社会の安定に寄与することが期待されます。
まとめ
2025年問題に対して、建設業界が直面する課題は多岐にわたりますが、適切な対策を講じることで明るい未来を築くことができます。
テクノロジーの導入、若年層や高齢者の活用、外国人労働者との共存など、さまざまな取り組みを通じて、建設業界は持続可能な発展を遂げることが可能です。
これにより、質の高いインフラ整備と安全で働きやすい環境が実現し、社会全体に貢献する業界としての役割を果たし続けるでしょう。
建設業界の未来は、多くの人々の知恵と努力によって切り拓かれます。
私たちはこれからも挑戦を続け、より良い社会の構築に向けて前進していきましょう。